野村総研・増田寛也氏×衆議院議員・古川康氏×IGPI・冨山和彦氏×BCG・秋池玲子氏
G1サミット2015
第9部 分科会B「人口減少社会における地域の方向性~地方分権と道州制~」
「2040年までに896の自治体が消滅する」--増田寛也氏による発表、いわゆる「増田レポート」は、各界を震撼させた。2008年をピークに人口は減少に転じ、日本は本格的な人口減少社会に突入する。その中で、豊かさや利便性を維持していくために、国土や都市計画も大幅な見直しに迫られている。人口急減と東京一極集中を回避し、医療や交通、教育といった生活インフラを守っていくために、どのようなグランドデザインが必要なのか。国や自治体、企業に、どのような打ち手が求められているのか(視聴時間1時間18分6秒)。
冨山 和彦氏
株式会社経営共創基盤(IGPI) 代表取締役CEO
古川 康氏
衆議院議員
増田 寛也氏
野村総合研究所 顧問
東京大学公共政策大学院 客員教授
秋池 玲子氏(モデレーター)
ボストンコンサルティンググループ
シニア・パートナー&マネージング・ディレクター
【ポイント】
・東京一極集中によって、効率的に経済をまわすという日本のモデルが破綻し、人が枯渇する。地方はさらに人口を減らした。東京での結婚・出産・子育ては非常に難しくなる。女性の社会参画の推進、出生率が高まる社会への切り替えができるかどうか、今の東京一極集中モデルの是非が問われている。これらを世の中に問題提起するため、昨年日本創成会議から提出した資料が、「消滅可能性都市」であり「人口指標」。1799の自治体があれば、1799通りの解決法があるはず(増田氏)
・「増田レポート」の衝撃は、49.8パーセントもの市町村が消滅する可能性を明言したことと、市町村単位であるため自分にとって身近なものとして感じられたこと、アクションが可能な単位に細分化されたこと(秋池氏)
・「増田レポート」の効果は、わが国の社会全体の問題だという問題意識を共有できるようになったこと。もう少し希望をもつため、社会のシステムを考えるところにやっときた。地方出身の議員が3割と少ない中で、都会選出の議員の共感を得ていくような作業が求められている(古川氏)
・地方で出生率が下がる最大の要因は、賃金の安さ。生産性が低くて賃金が上がらず、子供が作れない。一方の大都会は過密都市。過疎と過密の組み合わせをどうリアジャストするかが根本的な課題。地方で実際に残るのは、サービス型の産業。集積し効率を必要とするため、896都市全てを維持することはできない。取得再分配しようという議論と、スマートに撤退しネットワーク型で収斂する方向に分かれていくはず。上手に集約させることは、政治の責任としてやらねばならない(冨山氏)
・消滅可能性都市896の自治体の文化や伝統は残るが、機能・サービスが問題になる。その全部を支えるかどうか。今こそ東京の容積率を上げて効率性を高め、出生率を上げるといった議論もあるが、高齢化のリスクは克服できない。やはり地方に分散していくべきだが、行政には限界がある。ある程度集積がある場所のサービス産業で生産性を向上するため、人材をいかに集めるか。最終的には、民間企業の生産性をより上げる形で、東京の成長力を損なわず、眠れる地方の活力を出すことが解決策(増田氏)
・地域を成長させようと外から人を呼ぶ場合、家族ごと移り住める快適な環境づくりを、地域を作り上げる意味でも行うべき。空き家の活用も、実際には難しいケースが圧倒的。
人材流動性の少なさがこれまでの地方の良さだったかもしれないが、これからは、外部からの「風の人」が本当に住みたくなる環境を用意し、「土の人」と一緒に新しい風土を作り上げてもらうようにしなければならない(古川氏)
(肩書きは2015年3月20日登壇当時のもの)
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