日本三大夜景のひとつ神戸の夜景が望める摩耶(まや)山(702メートル、神戸市灘区)。その中腹に廃虚と化した建物がたたずんでいた。名前は旧摩耶観光ホテル。街を見下ろすようにひと際、存在感を放っていた。
戦後、摩耶山天上寺の参詣者や遊園地の客でにぎわっていた摩耶山だが、寺の火災や施設の経営難などで現在ではそのほとんどが閉鎖。重機が入る道もなく、撤去されずに建物が遺構のように残っている。
しかし、廃虚ばかりが残る摩耶の現状を逆手にとったツアーが人気となっている。約1.2キロの山道を下りながら廃虚や遺構を巡り、最後にホテル跡を見学する「摩耶山・マヤ遺跡ガイドウォーク」だ。観光客が減少した摩耶を活性化しようと地元関係者で結成された「摩耶山再生の会」が開催している。
「後を絶たない不法侵入に悩まされていたホテルのオーナーから相談を受けたことがきっかけ」と話すのは同会事務局長の慈(うつみ)憲一さん(51)。観光資源開発と不法侵入防止を狙って企画されたツアーは今年3月に開始され、月2回ほど行われている。
ツアー名の摩耶をカタカナで表記し、南米のマヤ遺跡を想起する絶妙なネーミングもあってか、毎回、定員20人のインターネット申し込みはわずか1分で満員になる。ホテルのエントランスを利用したカフェを1日限定でオープン予定など地域活性化への新たな試みも行われている。
かつては観光客らでにぎわい華やかだった摩耶山。時を経て廃虚と化した「マヤ」が再び人々をひきつけていた。(写真報道局 大西正純)