【ダイジェスト】鈴木直道氏:10年目を迎えた夕張破綻の教訓

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マル激トーク・オン・ディマンド 第782回(2016年4月2日)
今年は夕張市の財政破綻から10年となる。

 2006年に約353億円の財政赤字が発覚して財政破綻した夕張市は、この10年間、増税を含む住民の負担増と、行政サービスの廃止・縮小による歳出削減による極度の緊縮財政政策のもと、地道に財政再建の道を歩んできた。2015年度末までに約117億円の返済が済む見通しだが、それでもまだ200億円以上の債務が残っている。

 夕張市民は市民税や軽自動車税などの増税のほか、公共施設やサービスの利用料の値上げなどを受入れてきた。自治体によるゴミの収集料金も全国で最高水準になった。市長は給与の70%をカットし月給約26万円に、市議会議員の報酬も減額されて毎月20万円に満たないことろまで削り込んだ。職員数が破綻前の半分以下に減った市役所の職員の給与も全国最低水準だ。市内に9校あった公立小中学校は、今や小中それぞれ一校づつに統廃合された。市役所の出先機関も本庁以外に1ヵ所に集約されるなど、住民は大きな不便益に耐えている。

 そんな夕張で2011年から財政再建の先頭に立つ35歳の鈴木直道市長は、元々東京都庁からの応援で夕張に派遣され、そのまま居ついて市長になった変わり種だ。破綻から10年目を迎えた夕張市の現状について鈴木市長は、債務返済の過酷さとともに、将来に向けた政策が一切打てないことに危機感を示す。

 夕張市は財政破綻後、市民の流出が止まらず、破綻当時に約1万3千人あった人口が、現在は9千人を割るところまで減少してしまっている。炭鉱が全盛だった1960年代には12万人近くもあった人口が、その10分の1以下まで減ってしまっている。しかも、65歳以上の高齢化率が5割近い。夕張を出て行ってもやっていける人は皆去ってしまい、出るに出られない高齢者や、地元で商売を営む商店主だけが取り残された状態にあると言っても過言ではない。

 かといって、夕張市は定住促進策や子育て政策などの新規事業を一切打つことが出来ない。財政再建途上にあるため、歳出を伴う新規事業が許されていないからだ。債務返済は必要だが、このままでは地域経済も市民も疲弊してしまい、仮に借金を完済しても地域が死んでしまいかねない危機感を持っていると鈴木市長は語る。

 そこで鈴木市長は破綻から10年の節目に当たって、これまで財政再建一辺倒だった政策を見直して、債務を返済しつつ同時に地域再生も目指すという方向に舵を切ることを政治決断したという。安倍政権が進める地方創生策と連携して、夕張市を持続可能な地方に生まれ変わらせるために、今夏までに将来を見据えた夕張再生プランを取りまとめる予定だという。

 夕張市の現状は日本全体にとって決して他人事ではない。日本も膨大な財政赤字を抱えながら、本気でこれを解決しようとしないまま、赤字の垂れ流しを続けている。夕張の財政破綻後、市長に就いた鈴木氏は、夕張も破綻する前に手を打っていれば、多くの選択肢があったと残念がる。逆の見方をすれば、破綻をしてからの選択肢は非常に限られているということだ。

 破綻から10年を迎えた夕張は今どんな状態にあるのか。極度の緊縮財政の下で、市民生活はどのような影響を受けるのか。そうした中でも再生に向けた強い意思を見せる市民の力はどこからくるのかなどを、ゲストの鈴木直道夕張市長とともに、社会学者の中澤秀雄とジャーナリストの神保哲生が議論した。

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